特許庁から、「産業構造審議会知的財産分科会 第50回特許制度小委員会」の資料が公開されています。
産業構造審議会知的財産分科会は、今後の法改正を検討するものです。
今回の資料では、1つはネットワーク関連発明に関する実施に関する論点が主に掲載されています。
ドワンゴ事件(論文これ問の巻末の判例集の1つ目に掲載している判例です)に基づいて、一部の実施(例えば、SaaS等を踏まえたサーバ処理の実施)を国外で行った場合に、どこまで保護するかが議論となっています。
もともと、ソフトウェア関連発明の出願で難しいのが、この実施形態です。
出願をするに当たり、発明者が提案した内容のうち、どの処理が情報処理装置で実行でき、どの処理がサーバ装置等の他の装置で実行できるかを常に意識しないといけません。
例えば、A処理、B処理、C処理からなる装置があった場合、実際に、C処理はサーバ側で実行できるという場合があります。その場合、それを担保した実施形態、クレームを作成する必要があります。
また、単純にA処理と言われても、実はA1+A2に切り分けることが可能であり、A1とA2とが単独で実施できるといった形態にしておかないと、権利に穴が空いてしまいます。
ソフトウェア関連発明は、内容はそれ程難しくないものも多いのですが、出願人以外が実施しうる形態を可能なだけ想定して記載しておかないと、権利回避が他の分野と比べると比較的容易という点が大きな特徴だと思っています。
ちょっと話がそれましたが、ネットワーク関連発明については、資料は面白いのですが、暇つぶし程度に読んでも良いと思っています(ただ、理解するには論文合格レベルがないと難しいかもしれないので、解らないからといって気にしなくて大丈夫です)。
さて、もう一つは、国内優先権についても改正が検討されています。
国内優先権の先の出願の取扱いについて色々と課題が指摘されています。
課題の1つの例として、他国にPCT出願した場合、基礎出願の扱いに困るという話が出ています。
具体例を想定すると、日本(JP)の国内出願を基礎として、米国を受理官庁(RO/US)としてPCT出願をします。
この場合、日本(JP)の指定は国内優先権扱いになります。
しかし、受理官庁が米国であるため、日本の特許庁がそのままでは解らないという問題が出ます。
国際事務局を経由して情報収集はしているけど、限界があるよということが指摘されています。
これらの内容は、必ずしも法改正が行われるか不明ですが、現時点では論点となっている内容です。
このままのスケジュールでいくと、令和8年改正になるのかな?と思っています。
少なくとも来年の試験には影響しませんので、法改正が行われる前に是非試験に合格してしまって下さい。