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質問について(意図など)

質問があったのでお答えします。

ゆうしゃ
論文これ問の意匠14
3条-3条の2-9条ラインについて

定型文の③の9条についての文章ですが、
私の理解では、本問では公知意匠イと出願意匠ロの対比なので、
『意匠イはロに係る出願前に意匠登録されていることから本条には該当しない』
というような内容で考えたのですが、理解不足でしょうか?

自分が質問をもらったときは、ほぼ100%質問者の意図を考えるようにしています。
正直、質問に「解答だけ」提示すれば話は終わるし早いです。
しかし、あまりそれはせず
「どのように考えて質問しているのだろう」
ということからアプローチしています。

できるだけ根本的な原因を潰して、勉強自体正しい方向にして欲しいと考えているからです。

なお、今までこの方法で
「質問の回答だけしてもらえればいいし、余計なことは言わないで下さい。時間の無駄です。」
と、受講生に言われたのは一回だけです。

さて、話を戻しますと、この受講生さんはよく質問してくれる方なのですが、
今回の質問では、レジュメについて違う記載ではないか?という内容に感じたのですこし気になりました。

弁理士の受験生は、結構皆さんしっかり勉強されている人が大半です。
そうすると、勉強をしていると、自分としてはAと理解してとします。
このとき、Bとレジュメやテキストにあると、
「Aではないか?」と考えてしまうのです。
これは、結構、できる受験生あるあるです。

この考え方にはまると、勉強しているけど、前に進まない状態になります。
逆に合格者を見ていると、ここで「あっ、Bなのね」って切替えが凄い早いです。
理解は重要なのですが、「理解」と「こだわり」の境界線が難しいですよね。

さて、ということで今回は、気になったことがあったので、
追加質問で、「公知意匠が9条に該当しないのは何故?」と送ってみました。

それに対して、質問者から再度質問がありました。

ゆうしゃ

確かにおっしゃる通りですね。
登録されれば先願の地位が消えないってことは公知意匠相手でも9条適応されますね。

であれば、講義中に先生が教えてくださった、
『出願意匠』『公知意匠』と『同一・類似』『非類似』のマトリックスの図において、
公知意匠の欄に9条が入らないのはどうしてですか?

このメールをもらって、なるほどと思いました。

自分は、意匠の拒絶理由の考え方として、以下のようなマトリクスを示しています。

同一・類似 非類似
公知意匠 3条1項 3条2項
出願意匠 9条 3条の2

この表で、拒絶理由、無効理由の適用条文を判断して欲しいという表です。

さて、このとき、出願意匠というのは、登録公報が発行されると公知意匠になります。
しかし、公知意匠であっても、出願(先後願)としては、当然9条の判断も可能は訳です。

例えば、先願の意匠Aについては、
(1)登録公報が発行され、そこに掲載されている意匠イに着目すれば公知意匠
(2)登録公報が発行され、意匠権として着目すれば出願意匠

の考え方になります。

すなわち、これは自分が適用したい条文に応じて、
どちらの意匠であるかを判断をする必要があります。

短答試験の場合は、ほぼ「出願意匠」「公知意匠」の
どちらかで考えることが多いです。
また、指示が入ることが大半です。

しかし、論文試験の場合、着目している内容は、
自分が意識した内容に応じて変わります。

今回は、
公知意匠に着目するなら→(1)3条
出願意匠として着目するなら→(2)9条
を適用します。

ただ、すこし厄介なのは、実際の実務でも
公知になれば公知意匠で処理可能です。
なので、論文特有の考え方かも知れません。

このどちらで考えるか?というのが論文試験ではかなり難しいところです。

そもそも、公知意匠、出願意匠との関係がかなり難しいところです。
(ちなみに、全体意匠、部分意匠も同様に難しいです)

質問者も、まだ学習始めですので、理解するのはかなり難しいと思います。
ここは、他の多くの受験生も、混乱するところです。
なかなか100%の理解は難しいと思います。

なお、ゼミ生を見ていても、この辺の理解は混乱している人が多いです。
ゼミ生は色々な経路で勉強されている人がいます。
そのような受験生でも、ほぼ混乱するところということは、
学習方法や、講師の教え方という問題だけではないと思っています。

ということで、当該箇所については、
「難しいところ」と意識しておくだけでだいぶ違います。

ちなみに、同じ話は特許法でもあります。

特許法で、先願特許に基づいて39条違反が通知されることは、ほぼありません。
公開公報後の出願には、拒絶理由は29条1項3号で通知されます。
また、公報発行前の出願には、拒絶理由は29条の2で通知されます。
仮に、先願の特許出願が登録されている場合は、39条も該当しますが、通知はされません。
短答試験でもほぼ関係ありません。

しかし、論文試験では、39条については記載する必要があります。
それは、上記理由と同じです。
自分で「先願特許だから」と着目する必要があります。

さて、このように質問頂くと、自分としてはとてもありがたいことがあります。

今回の質問で、拒絶理由の表については、
出願意匠と公知意匠を排他的に受講生から見えていることが解ったからです。

この表について、自分はそのような観点ではあまり意識していませんでした。
質問があると「そう考えることもあるのか」と自分としても理解できます。

おそらく次の講義からは、この辺はもう少し説明する必要があることが解りました。

講義は、概ね一方通行なので、
自分が「解っている」と思っていることと、
受講生が「理解している」ことが一致しないことがあります。

質問を頂くと、その不一致に気がつけますので、非常に有り難いです。

例年、秋の講座とかでは、22時過ぎまで一生懸命質問されている受講生もいます。
また、メールやTwitterでご質問頂くこともあります。
そういう今までの質問した人たちの努力で、
自分もよりよい講義を伝えられるようになると思っています。

なので、質問は本当にありがたいので、質問はするようにして下さい。

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この記事を書いた人

都内在住の弁理士。平成14年登録。
専門は特許(特にソフトウェア特許、画面UI、システム)。
LECで弁理士関係の講師。

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