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誤訳の訂正について

ゆうしゃ

実案法の訂正は「誤記の訂正」
特許法の訂正は「誤記又は誤訳の訂正」

なぜ、実案の訂正には誤訳がないのでしょうか?

馬場
単に規定としてないだけです。試験的にも影響はあまりないと思います。
あってもいいじゃないかと言われればそれまでですが、現行法の規定としてはそうなっていないです。

 

ただ、今までになかった質問なので、趣味の範囲として回答しておきます。

そもそも、「誤訳」という言葉が入ったのは平成6年改正において外国語書面が特許法に導入されたことがきっかけです。

それ以前から特184条(実48条)はあったのですが、外国語書面出願制度は採用されていませんでした。
また、パリ優先権を利用した出願において誤訳の訂正が認められない判例がありました。
更に、「米国では日本語による特許出願が認められているのに、日本は日本語でしか認められていない」という米国の要請により改正が入りました。
(なおこのとき、日本が外国語書面出願制度を導入する代わりに、米国の特許期間を付与の日から17年を最初の出願日から20年に変更することを認めさせています)

さて、このとき実用新案法には外国語書面出願制度は導入されませんでした。

(補説)実用新案法において英語による出願を認めなかった理由
審議会答申では、以下の理出から、実用新案制度においては英語による出願を認める必要はないとされた。このため、今回、実用新案法において英語出願を認める改定は行わなかった。
① 我が国において外国人出願の占める割合(平成4年の出願ベース)をみても、特許出願の場合は全出願件数371,894件のうち外国人出願は33,875件(9.1%)であるのに対し、実用新案登録出願の場合は全出願件数94,601件のうち外国人出願は1,284件(1.3%)にすぎず、英語出願を認めるニーズに乏しいこと。
② 国際的にみても、WIPO特許ハーモナイゼーション条約交渉の場等において、実用新案登録出願に対し英語による出願を認めるべきといった議論は出ていないこと。
③ 今回の改正は、日本語による特許出願を認めている米国からの要望等に応じて、英語による特許出願を認めることとしたものであること。(平成6年改正本 P.41)

したがって、「外国語書面出願制度」の導入に伴い、特許法の条文に「誤訳」という言葉が登場します。
しかし、実用新案法においては、そのような改正がされずに、「誤訳」という言葉も登場してきません。

ただ、実48条の出願がありますので、その点については実48条の8を改正しています。
実48条の8により、国際出願の明細書の範囲で補正ができるようになっています。

なお、実用新案法においては、イ〉登録前の実体審査を行わないため、誤訳の訂正に関する審査負担を考慮する必要がないこと及びロ)出願公開制度がなく、登録された後に初めて公報が発行きれる制度であるため、出願段階での補正の内容についての第三者の監視負担が特許に比べ少ないことから、特許法第17条の2第2項に規定した誤訳訂正書の提出や翻訳文を基準とした新規事項の追加に関する規定は設けていない。(平成6年改正本P.95)

極力不要な改正は行いませんので、積極的に誤訳という言葉を入れていないという理解で良いと思います。

 

 

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この記事を書いた人

都内在住の弁理士。平成14年登録。
専門は特許(特にソフトウェア特許、画面UI、システム)。
LECで弁理士関係の講師。

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