基本的に補正命令というのは裁量になります。
例えば、特17条3項にあるように「特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。」と規定されています。
これは裁量にしているのは、例えば、ものすごい軽微な誤記があったときでも、強行規定だと補正命令を出す必要があります。
軽微な誤記は、特許庁側で職権でなおしてくれることがあります(ありがたい!)
したがって、裁量規定であった方が良いのです。
しかし、特133条1項だけ、特許法で唯一強行規定です。
「審判長は、請求書が第百三十一条の規定に違反しているときは、請求人に対し、相当の期間を指定して、請求書について補正をすべきことを命じなければならない。」
これには理由があります。
例えば、注解特許法第2版下巻P.2605には、以下のように記載があります。
「命じなければならない」と規定しているのは、特許法131条に規定する記載要件は添付書類は審判の対象を特定しつつ、審判当事者の攻撃防御によって重要な事項であるので、これらが不備ないし不明確であると被請求人の反論や適切な防御のために不必要な負担が生じて審理遅延の原因になるので、審判請求書の被請求人への送達前に職権によってこれらの不都合を回避することが期待されているからである。
審判については相手がいることだから、厳格にみますってことになります。
なお、R04-特08-イの問題では、前置審査に付されるため、扱いが変わります。
この場合は、特許庁長官になるので、131条の取扱いではなくなり、裁量となってしまいます。
ただ、拒絶査定不服審判のときは、相手もいない(特許庁)ので、裁量でもそれ程不都合はないでしょう。
試験的には、「主体が審判長のときだけ強行規定!」って考えるのが早いと思います。