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質問(特105条の3)について

質問があったのでお答えします。

ゆうしゃ

特許法105条の3、H20-10-ホについて、
損害の性質上と事実の性質上の違いについて、教えて頂きたいです、よろしくお願いします。

本当に条文上言葉が違うというところなのですが、この辺は青本で説明があります。

〈民事訴訟法二四八条との関係〉民事訴訟法248条には「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる」との規定が設けられており、損害額の立証が極めて困難である場合については、損害額の立証に関する証明度を軽減し、救済を図ることとしている。
 しかし、民事訴訟法248条は、「損害の性質上……極めて困難である」との要件について、一定の仮説を立てなければ損害額の立証が不可能な場合(慰謝料、死亡幼児の将来利得等)を想定したものであるといわれているため、一義的に「損害の性質上……極めて困難である」とは断じ難い特許権侵害による損害について適用可能かどうかは、議論の分かれるところである。
 これに対し、本条は、損害額を立証するために必要な事実の立証が「当該事実の性質上」極めて困難である場合に適用があり、損害額の立証が「損害の性質上」極めて困難とはいえない場合であっても、証明度を軽減することができる。(青本P.384)

この辺は、そもそも民事訴訟との関係(法律用語の解釈)で、規定されているものです。
損害の性質上というのは、かなり広い意味になってしまいます。
特許権侵害訴訟だと、「本当にできないの?」となりそう。

そこで、もう少し狭い「事実の性質上」立証できない場合と、105条の3を設けたわけです。
そうすると、今度は「事実の性質上」とはなんぞや?となりますが、これも青本に書いてあります。
特に具体例が解りやすいと思います。

⑴ 侵害行為があったため、製品の値下げを余儀なくされた場合。
⑵ 製品に対する特許発明の寄与度の算定が困難な場合。
⑶ 一部の地域における侵害品の販売数量は立証できたが、更にそれ以外の地域の販売数量についても立証しようとすると法外な費用がかかってしまい、一定の努力を払ってもなお全てを立証することが極めて困難である場合。
 このような実情に鑑み、損害額の立証が困難な場合の救済を図るという民事訴訟法二四八条が目指す考え方を特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においても適用できるようにするため、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所が相当な損害額を認定することができる旨を明らかにした。(青本P.384)

さて、この辺の文言を突き詰める必要はないです。
ということで、青本の具体例で主張している内容を立証するときに、105条の3が登場するのだということを理解しておけば試験的には十分だと思います。

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この記事を書いた人

都内在住の弁理士。平成14年登録。
専門は特許(特にソフトウェア特許、画面UI、システム)。
LECで弁理士関係の講師。

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